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限局性前立腺癌への放射線治療におけるSpace OARシステムについて
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~安全・安心の治療を目指して~
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限局型前立腺がんの治療には大きく手術と放射線治療があり、治療成績に関してはどちらも遜色なく、患者さんの希望により振り分けられています。放射線治療を希望される患者さんへは他院での重粒子線治療や小線源治療、当院での定位放射線治療、寡分割強度変調放射線治療より選択していただいています。当院では2016年よりサイバーナイフによる70Gy/28回の寡分割放射線治療を開始し、60Gy/20回、54Gy/15回と徐々に回数低減を行い、2020年より36.25Gy/5回の定位放射線治療を開始するに至っています。治療成績はいずれも良好で、副作用出現に関してもいずれも他の治療と比べると低減できていますが、どうしても前立腺に隣接する直腸への副作用による直腸出血が数%でみられ、1例にGrade3の直腸瘻が生じ、直腸への線量低減が早急に必要と考えるようになりました。
Space OARシステムは直腸への被曝線量低減を目的に開発されたハイドロゲルで、直腸と前立腺との間に注入し間隔を開け、前立腺に高線量を、直腸へは線量低減が図れます。2019年に当院も導入し、サイバーナイフでの放射線治療を行う症例は可能であれば前立腺への金マーカ挿入と同時に泌尿器科医にて施行いただくようにしています。前立腺への2個の金マーカ留置は、その動きを確認しながら放射線治療を行うため必須です。システム導入後、直腸出血の症例は今のところはみられておらず、安全性が担保できたため定位放射線治療を2020年より徐々に開始しています。
注入のポイントとしては、経直腸的前立腺超音波で脂肪層をしっかり確認し直腸への誤注入をなくす、10秒ほどで固まるため注入を遅すぎないようにする、麻酔をしっかり効かせて患者さんが動かないようになどがあります。約6ヶ月で吸収消失するため、後の副作用の心配もありません。導入後、65例ほど治療を行っていますが、現時点で直腸出血の症例は見られておらず、有用であるといえます。使用のメリットとして、①直腸線量低減②前立腺への線量増加と均一性向上③治療計画時間の低減があげられ、安全・安心な放射線治療が可能となっています。
放射線科 診療部長 南 和徳
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SpaceOARは、サドルブロック麻酔下で20分程度、入院は約2泊3日です。ご検討の症例があればまずは泌尿器科へご紹介ください。放射線科と連携し、ご対応いたします。
泌尿器科 主任診療部長 渡辺 淳一