がん診療
当院の放射線治療
放射線治療について
がん治療は、手術、放射線、抗がん剤と免疫療法が四本柱であり、これらを組み合わせた治療が主流となってきています。その中で放射線治療は、体への負担も少なく、様々な“がん”に対し有効な治療法です。最近、治療を受ける患者さんは増加してきています。実際に治療を受ける患者さんには詳しく説明を行い、放射線治療のパンフレットをお渡ししていますが、ここでは放射線治療の簡単な流れを紹介いたします。
放射線は、がんにも正常細胞にも同じようなダメージを与えますが、回復力に差があり、がんよりも正常細胞がうまく回復していくように放射線治療医が病気に応じて計画を立てて、治療を行っていくことになります。
治療は、目に見えず、体にあたっても何も感じないX線や電子線を用いて行います。
一般的な治療の方法としては、一回5分間くらいの治療を土日を除く平日毎日、合計15回〜30回に分けて行っていきます。回数や方法に関しては“がん”の種類や部位の場所などにより異なります。
放射線治療医が診察を行い、治療の範囲や放射線をあてる方向、放射線の種類などを決定し、それを基に治療部位近くの皮膚にインクでしるしを書き、毎回しるしに合わせて治療を行っていきます。毎日の治療は診療放射線技師と看護師が行っていきます。
治療は一部位で約5〜10分しかかからず、寝台にただ休んでいるだけで、痛みを伴う治療ではありませんし、麻酔をかけたり切ったりもしません。
なお、治療装置は2台あり、病変に応じて高精度放射線装置であるサイバーナイフでの定位放射線治療か通常のリニアックかの使い分けを行っています。
巨大な病変や放射線が効きにくい病変に対しては、治療効果を高める目的で、増感放射線治療(KORTUC)も行っています。
増感放射線治療について
がんが巨大になると、細胞中の酸素濃度が減り、抗酸化酵素が増え、放射線の効き目が3分の1に低下します。この巨大ながんに、オキシドールとヒアルロン酸を少量注射することで、放射線治療の効果を3倍以上に増加させることが可能となります。これを増感放射線治療【KORTUC(KochiOxydol Radiation Therapy for Unresectable Carcinomas)】と呼んでいます。現在、海外で臨床試験が行われています。
品質管理について
当院の放射線治療装置は公益財団法人医用原子力技術研究振興財団による「治療用照射装置(X線)の出力線量の測定」を受け、適正な出力線量であることが証明されています。
また、性能の不変性を確認する為に、日頃から厳密な点検を行い、精度の維持と安全性の確保に努めております。
副作用と日常生活での注意事項
- 休息を十分にとる。疲れやすくなるため、十分な休息や睡眠をとりましょう。
- 入浴は主治医の許可があれば可能ですが、皮膚のしるしをこすって消さないように注意してください。
- 食欲は若干低下しますが、栄養のあるバランスのとれた食事をおとりください。
- 副作用について
急性期:皮膚炎、粘膜炎、脱毛、腸炎(下痢)、膀胱炎など治療中に起こってきますが、時間が経つと治ってきます。治療を行う部位に応じて症状は異なってきます。
晩 期:照射後半年〜数年後に照射部位が線維化を起こすことにより生じてきます。
認知機能の低下、皮膚の硬化、唾液量の減少、脊髄症、肺線維症、心膜炎、萎縮膀胱など
副作用に関しては、治療部位で出現の仕方は異なり、症状の程度にも個人差があります。副作用に関しては十分に治療前に考慮し、放射線腫瘍医から説明があった後に治療は行われており、なるべく最小限に抑えるよう努力しています。
緩和的放射線治療
「緩和的放射線治療」とは、がんの進行に伴い生じてくる、もしくは近い将来に起こるであろう、苦痛を伴う様々な身体症状の改善やQOL(生活の質)の向上を目的として行われる放射線治療の一つです。
症状緩和が期期待出来る症状の代表例
- 脳転移に伴う頭痛・嘔気・麻痺など神経障害
頭痛やめまい、嘔気・麻痺・しびれなどさまざまな神経障害の症状改善が期待できます。 - 骨転移に伴う疼痛・麻痺
骨転移により骨折や脊髄・神経圧迫などさまざまな症状が起こり得ます。中でも疼痛に関して は、再発進行期のがん患者さんのほとんどが強い痛みを経験するといわれています。放射線治療により約60~90%の症例で骨転移による疼痛・麻痺などの改善が期待できます。 - がんに伴う出血
がんにより血管がダメージを受け、様々な部位で出血をきたすことがあります。肺がんでは血痰、胃がん・大腸がんなどでは下血など。放射線治療により比較的早期に止血効果が期待できます。 - がんに伴う麻痺・しびれなどの神経障害
がんにより神経が圧迫されると、麻痺や痺れなどの神経障害を引き起こすことがあります。激痛や筋力低下、しびれなどさまざまな症状があります。放射線治療により神経障害の緩和が期待できます。 - がんに伴う気道の狭窄・閉塞(呼吸困難など)
がんにより気道を圧迫され、呼吸がしにくくなり、息切れや咳嗽などの症状が出ることがあります。肺がんなどでよくみられ、放射線治療により呼吸困難の緩和が期待できます。 - がんに伴う消化管の狭窄・閉塞(嚥下困難等)
がんによる消化管の圧迫で、食事が通りにくくなることがあります。食道がんなどでよくみられる症状です。放射線治療により、通りやすくなることが期待できます。
このように、緩和的放射線治療は苦痛や日常生活の支障となるさまざまな症状を緩和することができます。副作用を軽減し患者様のQOL(生活の質)を向上させ、治療を続けられるようにするためにも、ぜひ知っておいていただいてほしい治療法の一つです。
治療時間は10~20分程度で、回数も患者さんの状態に合わせ1回~数回で可能であり、負担も少なく治療可能と考えます。
上記のようなことでお困りでしたら、主治医へご相談いただき放射線科の受診を検討いただければ幸いです。