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診療科・部門

心臓血管外科

心臓血管外科について

心臓血管外科01心臓血管外科とは、文字通り心臓や血管の外科治療を専門に行う診療科で、具体的には心臓のバイパス手術や弁膜症の手術、大動脈瘤・大動脈解離などの大動脈手術や末梢血管の手術などを行います。心臓や大動脈の手術というと大変大きな手術で、患者さんにとって大変恐ろしいイメージが今でもあるかもしれません。しかし心臓血管外科手術の進歩は目覚ましく、体にやさしい手術(低侵襲)を安全に行う技術やシステムがあります。特に心臓血管外科医の技術だけではなく、それを取り巻く専門的にトレーニングを積んだ様々な職種が心臓血管外科医を支え、患者さんの外科治療を安全にかつ安心して受けられるようになりました。
また、可能な限り自宅退院を目指す、術後心臓リハビリチームで患者さんをサポートします。心臓血管外科医の技術だけではなく、それを取り巻く分野について専門的にトレーニングを積んだ様々な職種と連携し、患者さんに安心して外科治療を受けていただけるようにしています。

対象疾患・診療内容

【対象疾患】

  • 大動脈瘤
  • 大動脈解離
  • 内臓動脈瘤
  • 弁膜症・僧帽弁閉鎖不全症
  • 狭心症・心筋梗塞に対する冠動脈バイパス手術
  • ステントグラフト留置術
  • 心臓・胸部大血管手術

狭心症・心筋梗塞に対する冠状動脈バイパス術

心臓の筋肉を養う血管(冠状動脈)が細くなったり、完全に詰まってしまった状態を狭心症、心筋梗塞といいます。治療としては薬による治療や、カテーテル治療が内科的に行われていますが、病気が進行し、より重症化すると内科的な治療は不可能となるため、外科的に行う冠動脈バイパス術という治療法があります。特に高齢者では体に負担がかからないよう、人工心肺(機械のポンプ、人工の肺)を使用せずに、心拍動下(心臓が動いた状態)でバイパス術を行うことを積極的に行っていきたいと考えています。

オフポンプ心拍動下冠動脈バイパス術

人工心肺を使用した手術は、人工心肺回路内を血液が通過する際の血液障害や炎症反応が、患者さんの体にとっては侵襲(負担)となっていました。この問題を解決するため、心臓を止めないで血管吻合を行う心拍動下冠動脈バイパス手術が開発されてきました。当院では人工心肺装置を用いずに、スタビライザーと言う器具を、冠動脈の走行する心臓表面に固定して拍動を抑えて血管縫合する心拍動下冠動脈バイパス術を導入しています。以前では手術適応にならなかった高度の脳血管障害を有する患者さんや、ご高齢の患者さんにも低侵襲で手術が行えるようになり、14日程度での早期退院も可能となりました。

弁膜症に対する弁形成、弁置換術

心臓にある弁が開きにくくなったり、開いたままの状態になり、心臓に負担がかかってしまっている状態を弁膜症といいます。その扉を修復(弁形成)、または、取り替える(生体弁、機械弁)手術を行っています。弁形成、生体弁、機械弁と、その患者さんに適した手術法を提案し、選択いたします。

心臓の働き

心臓は四つの部屋があり、右心房と右心室、左心房と左心室があります。右の心臓は全身からかえってきた血液を、肺動脈を通じ肺に送る働き、左の心臓は肺できれいになった血液を、全身に送る働きを担っています。
心臓には合計四つの弁があり、左心房から左心室への入り口にある弁が「僧帽弁」、左心室の出口にある弁が「大動脈弁」です。右心室の入り口の弁は「三尖弁」、出口の弁は「肺動脈弁」といいます。弁は血液の流れを一方通行にする働きをしています。
弁の病気は大きく分けて、血液が弁を逆流し、効率よく血液が送れなくなる「閉鎖不全症」と、弁が硬くなって出口が狭くなる「狭窄症」とがあります。

心臓の動き

僧房弁、大動脈弁は特に血液循環の大切な役割を担っています。そのため、悪くなった場合には人工の弁膜に取り替える必要があります。これが心臓弁置換術という手術です。人工弁には金属(特殊な炭素)でできている機械弁と、生物組織(動物の弁膜)でできている生体弁があります。各々には性能の特色があり、患者さんの病態によってどちらかを選択します。このほかに弁膜を修理して機能を回復させる弁形成手術もあります。

動脈瘤、急性大動脈解離に対する人工血管置換術、ステントグラフト内挿術

全身に血液を送る大動脈は体の中で最も太い血管で、心臓から上向きに出た後、頭や腕などに血液を送る3本の血管を枝分かれさせながら弓状に左後方へ大きく曲がり、ほぼ背骨の前面に沿って腹部方向に下っています。
胸部大動脈や腹部大動脈が病気になり太く膨れた状態の血管を大動脈瘤といいます。大動脈瘤は、動脈硬化が原因で起こる真性大動脈瘤と、大動脈壁の中膜が壊死し、内膜と外膜の間に血液が流れ込み瘤ができる大動脈解離に分かれます。
これらの悪くなった血管に変わり、人工の血管を移植する手術を「人工血管置換術」といい、その他ステントグラフト内挿術という低侵襲治療も導入しています。

大動脈の図
開腹外科手術による人工血管置換術

従来から行われている治療方法です。全身麻酔のもとで胸部あるいは腹部を開腹し、大動脈瘤の上下で血流を遮断したうえで、人工血管という布製のチューブに取り替える手術です。身体の負担が大きくなり、一定期間の入院生活や食事の制限などがありますが、手術成績は向上しており、長期成績も良好です。しかし、ご高齢であることや他の病気(心臓病、肺の病気、腎臓病等)が併存しているなどの理由により、手術が危険な場合があります。
当センターにおける待機的(非破裂)腹部大動脈瘤に対する治療方針は、手術リスクの低い患者さんに対しては、開腹による人工血管置換術を第一選択にしています。

大動脈置換の図
ステントグラフト内挿術

特殊な金属(ステント)を縫い合わせた人工血管(グラフト)を、カテーテル(プラスチック製のチューブ)の中に納めて太ももの付け根から血管の中に入れ、患部で広げて血管を補強するとともに動脈瘤の部分に血液が流れないようにする治療です。メスで切る部分が小さいため、患者さんの負担は小さく、入院期間が短くなるなどのメリットがあります。ご高齢の方や、COPD(在宅酸素)などの他の病気が理由で開腹外科手術を見合わせておられる方への新しい治療法として広く普及している治療法です。

ステントグラフト
ステントグラフト
挿入前のステントグラフト
挿入前のステントグラフト

ステントグラフト内挿術は、心臓血管外科と放射線科が共同で治療を行います。2018年4月に、放射線科主任診療部長として坂本一郎医師が赴任しました。坂本医師は、1999年に行われた長崎県ステントグラフト内挿術第一例目から現在まで至るまで約500例以上のステントグラフト内挿術治療に携わり、長崎におけるステントグラフト治療の第一人者です。坂本医師の赴任により24時間対応可能となったステントグラフト治療に、心臓血管外科として今後力を入れて取り組んでいきます。

心臓血管外科02

下肢閉塞性動脈硬化症に対する、血管手術、カテーテルによる経皮的血管形成術

主に足の動脈に動脈硬化が起こり、狭くなったり、詰まることで、足を流れる血液が不足し、それによって痛みを伴う歩行障害が起きる血管病を下肢閉塞性動脈硬化症といいます。患者さんの状態に合わせて、心臓血管内科と相談し、カテーテルによる血管形成術(細くなった血管を広げる治療)や、手術によるバイパス術を選択治療いたします。

主な症状
フォンテインI度
(もっとも軽傷)
足先が冷たい、しびれる。足の指が青白い。
フォンテインII度
(中等症)
数十~数百メートル歩くと、足(主にふくらはぎ)が痛くなったりだるくなったりし、休むと症状が軽快します。(このことを、間歇性跛行(かんけつせいはこう)と言います)
フォンテインIII度
(高度虚血)
じっとしていても足が痛くなります。さすような痛みが常に持続する状態です。
フォンテインIV度
(重症)
足先に潰瘍ができます。足が壊死(腐ってしまうこと)し、黒色に変色します。放置すると、切断が必要になってしまいます。通常激痛を伴いますが、糖尿病を持っている方は痛みを感じない事もあります。
主な治療法

薬物療法
主に、抗血小板薬(血をさらさらにする薬)と血管拡張薬が使用されます。

カテーテル治療
体外から動脈にカテーテルを入れて操作し、狭くなったり詰まったりした部位を、風船で広げたりステント(金網を円筒にした人工血管)を留置して、血行をよくするのがカテーテル治療です。この方法は低侵襲であり、近年、飛躍的に治療成績が向上し、とくに骨盤内を流れる腸骨動脈の領域の治療に成果を上げています。当院では、原則1泊2日の入院でカテーテル治療を行っています。

バイパス手術
バイパス手術は、狭くなったり詰まったりした箇所に、体のほかの部分から切り取った血管または人工血管を「バイパス」として取り付け、血流を確保する方法です。カテーテル治療に比べ、患者さんの身体的負担は大きいのですが、動脈の場所によって、この方法が有利な場合もあると言われています。

心臓血管外科

手術件数

  2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
心臓胸部大血管症例 69
(TEVAR 6)
71
(TEVAR 10)
77
(TEVAR 13)
44
(TEVAR 10)
60
(TEVAR 6)
腹部大動脈腸骨動脈領域手術 24
(EVAR 12)
29
(EVAR 12)
31
(EVAR 18)
33
(EVAR 15)
26
(EVAR 16)
末梢血管手術、その他 49 46 36 55 33
総症例数 142 146 144 132 119

心臓血管外科

橋詰 浩二

診療科長

卒業年度 平成2年卒業
専門分野 心臓血管外科一般
担当診療科

・所属部門
心臓血管外科
資格など
  • 心臓血管外科専門医・修練指導者
  • 日本外科学会認定医・専門医・指導医
  • 日本脈管学会脈管専門医
  • 日本胸部外科学会認定医
  • 臨床研修指導医
経歴
  • 1990.5 - 1992.10 
    長崎大学医学部附属病院 心臓血管外科 研修医 医員
  • 1992.11 - 1993.4 
    恵佑会札幌病院 外科 医員
  • 1993.5 - 1994.3  
    長崎大学医学部附属病院 心臓血管外科 医員
  • 1994.4 - 1996.3  
    大分県立病院 心臓血管外科 レジデント
  • 1996.4 - 1998.3  
    国立長崎中央病院 心臓血管外科 医師
  • 1998.4 - 1999.4  
    長崎大学医学部附属病院 心臓血管外科 助手
  • 1999.5 - 2001.3  
    国立循環器病センター 心臓血管外科 レジデント
  • 2001.4 - 2004.6  
    国立病院機構長崎医療センター 心臓血管外科 医長
  • 2004.7 - 2006.8  
    ドイツ ドレスデン心臓病センター 心臓血管外科 臨床医師
  • 2006.9 - 2013.12 
    長崎大学病院 心臓血管外科 助教 講師
  • 2014.1 - 現在   
    長崎みなとメディカルセンター 心臓血管外科 主任診療部長
モットー 患者さんに優しく最善の治療を行う

横瀬 昭豪

診療部長

卒業年度 平成9年卒業
専門分野 心臓血管外科一般
担当診療科

・所属部門
心臓血管外科
資格など
  • 心臓血管外科専門医
  • 日本外科学会専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定医
  • 日本循環器学会専門医
  • 医学博士
  • 臨床研修指導医
  • 腹部ステントグラフト実施医
モットー 常に最善の治療を探求する。患者様の気持ちに寄り添う。

心臓血管外科

メッセージ

救急の患者さんの場合は、火・木曜日以外でもご対応させていただきます。
病気になり、不安を抱えている患者さんに対し、優しさをもって接し、患者さんやご家族と親身に向き合い、信頼される関係を結んでいけるよう診療にあたることを心掛けています。また、患者さんはもとより、紹介していただく先生や院内スタッフからも信頼される心臓血管外科を目指していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

Case Report

  • 高齢者の胸腹部移行部の大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術の1例

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心臓血管外科

  橋詰浩二   橋詰浩二  
  横瀬昭豪   横瀬昭豪  

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